歌声には、その人の人生が宿る。
それは単なる比喩ではありません。
声は身体の一部であり、心の動き、過去の経験、価値観までもが響きに反映されます。
どんなにテクニックを磨いても、「生き方の響き」は隠せないのです。
テクニックよりも「心の軸」
多くの人が「上手く歌う」ことを目指しますが、
聴く人の心を動かすのは完璧な音程ではなく、その人らしさです。
人生の痛みや喜びを受け入れたとき、声は柔らかく、深く、
そして温かく変わっていきます。歌とは、自分の心を開く行為でもあるのです。
日常が声を育てる
ボイストレーニングで声を出す時間よりも、日々どう生きているかが声を形づくります。
人との関わり方、心の使い方、ストレスとの向き合い方──そのすべてが音となって現れます。
だからこそ、音楽を学ぶことは「自分自身と向き合う時間」でもあります。
人生を映す「音」としての歌
ジャズでもポップスでも、ジャンルを越えて大切なのは本物の感情。
表現とは、うまく見せることではなく、誠実に伝えること。
歌声がその人の人生を映す鏡であるなら、
音楽を通じて「どう生きたいか」を問い直すことが、最高のレッスンになるのかもしれません。
野口 尚宏