伝える音楽と分かってもらいたい音楽の違い
音楽を演奏するとき、「分かってもらいたい」という気持ちは、
実は伝わりづらいことがあります。
聴き手に伝わるのは、
演奏者が心から「伝えたい」と願っている感情の熱量です。
“理解”より“共鳴”を目指して
音楽表現は論理的な説明ではなく、
感覚や感情を共有する手段です。
共感を呼ぶ演奏とは、「正しく伝える」ことよりも、
「どう響くか」に意識を向けたものです。
技術だけでは届かない“気持ちの粒”
どれだけ上手に弾けても、
そこに伝える気持ちがなければ、聴き手の心に残りません。
逆に、多少つたなくても伝えたい意思があれば、
それは音楽として十分に成立するのです。
教える立場でも同じことが言える
生徒さんに伝えるときも同じです。
分からせようと力むのではなく、
感じたことを素直に伝える姿勢こそが、信頼を生みます。
音楽も人間関係も、まずは伝えようとする意志から。
野口 尚宏