「演奏が上手い先生がいい先生」とは限らない
音楽教室を選ぶ際、どうしても演奏がうまい人=良い先生だと思いがちです。
もちろん、演奏力があることは素晴らしいこと。
でも、演奏が上手いことと教えることは別の能力だと、私は実感しています。
教える力は「関わり方」に宿る
私自身、プロとして演奏活動を経て、長年ジャズ教室を運営しています。
生徒さんにとって大切なのは、その人の演奏歴やキャリアよりも、
自分とどう向き合ってくれるか。
何をどのように教えてくれるかです。
教えるというのは、単に技術を伝えるだけでなく、
相手のペースを尊重し、可能性を引き出すこと。
演奏家としてどれだけ評価されていても、
生徒さんが質問しづらかったり、
否定されたように感じてしまう関係では、学びは前に進みません。
権威性は「肩書き」ではなく「姿勢」から
よく「どこで演奏していたのか?」
「どこか音大をでたのですか?」と聞かれます。
それもひとつの信頼材料にはなりますが、
教室に通う生徒さんにとっての“先生としての信頼”は、
日々の関わりの中に築かれていくものです。
間違えても責めない、つまずいたときに支えてくれる、楽しく学べる雰囲気を作ってくれる。
そういった姿勢が、生徒さんにとっての安心感や信頼につながります。
教えることは、自分自身の学びにもなる
演奏家として活動していると、
どうしても「自分がどう表現するか」に意識が向きがちです。
でも、生徒さんに教える中で、自分がなぜこのフレーズを弾いているのか、
どう感じているのかを言語化し、整理することが求められます。
つまり、教えることは自分自身の音楽を深めることでもあるのです。
演奏活動と教育活動は、対立するものではなく、
互いに補い合える関係だと思っています。
音楽教室を選ぶ際に大切なこと
どんな先生に習うかは、あなたの音楽人生を大きく左右します。
ぜひ、その先生が「どれだけ演奏できるか」だけでなく、
「どれだけ寄り添ってくれるか」に注目してみてください。
教室の雰囲気や、生徒さんとの関係性、指導に対する姿勢。
そういったことが、長く続けられるか、音楽が好きになれるかに直結します。
野口 尚宏