クラシックのバイエル、ジャズのコード──基礎練習の本質とは?

クラシックのバイエルとジャズのコード学習の違いを表現したイラスト。ピアノを弾く少女、Cmaj7の鍵盤上のサクランボ、コード譜が組み合わされている。

クラシックの基礎は“バイエル”から

クラシックピアノを習ったことのある方なら、
きっと一度は「バイエル」を弾いた経験があるはずです。
音階・ポジション・両手の動き・譜読み力など、
ピアノ演奏に必要な基礎力を身につける教材として知られています。


ジャズの基礎は“コード”にある

一方、ジャズピアノでは「バイエル」にあたるものとして、
コードの理解と運用が重視されます。
たとえば、CM7、Am7、D7などの和音構造を覚え、
自由に転回・置き換え・伴奏に使える力をつけていくのです。


“譜面を弾く力”と“音を選ぶ力”の違い

バイエルは譜面通りに正確に弾くことを通して、
「楽譜を読む力」「両手の動きの精度」を育てます。
それに対してジャズは、
「この場面ではどんなコードが合うか?」
「この音の響きはどうか?」といった判断力を養う練習が中心です。


ジャズのコード練習=創造力の入り口

コードの押さえ方を覚えるだけでなく、
そこからリズム、ボイシング、ベースラインの動きを自分で作り出す。
それが、ジャズの練習が“創造的”だと言われるゆえんです。

単なる暗記ではなく、「どう弾くか」「どう響かせるか」
考えること自体がジャズ的思考の第一歩です。


教室でも、コードを“知識”ではなく“音として覚える”指導を

当教室では、クラシック出身の方にも、
コードを単なる記号ではなく「響きとして体に染み込ませる」レッスンを行っています。
バイエルで鍛えた譜読み力と指の正確さをベースに、
ジャズの自由さと即興性を融合させていく──それが上達の近道です。


バイエルか、コードかではなく、“音楽の核”を育てることが大切

どちらもを学ぶことで自由への準備をしている、
という意味では共通しています。
クラシックもジャズも「音楽の土台」を育てる入り口の違いにすぎません。

バイエルに取り組んできた方こそ、
ジャズのコードに触れることで、新しい景色が見えるはずです。

野口 尚宏